9月18日・19日の2日間、うるまの海を舞台にした歴史文化や海の恵み、サンゴについて学ぶ海と日本プロジェクトオリジナルイベント「しまうみ探検隊」が開催!
オンライン形式となる初日のプログラムに県内小学5・6年生26名が参加しました。オリエンテーションに登場した田中啓介さんはニックネーム「じょりぃ」でみんなにあいさつ。「新型コロナウイルス感染拡大の影響でうるまの海に行けなくて残念だけど、自宅でも楽しめるプログラムを考えたのでいっしょに楽しみましょう」と開始宣言。
最初のプログラムは海塩づくり。教えてくれたのは高江洲優さん。高江洲さんは、昔ながらの沖縄の風情が残る浜比嘉島にある、初めて琉球に降り立った神様が住んだとされる史跡シルミチュー近くの塩工房「高江洲製塩所」で塩づくりを営んでいます。浜辺からポンプで海水をくみ上げ、竹枝を使って組み立てた「流下式塩田」と呼ばれる装置の上から海水を流します。竹枝の先から滴る海水は、太陽と風の力でゆっくりと蒸発し、20%近くまで塩分濃度を高めていくそう。そこから工房内の平釜でじっくりと炊き上げて仕上げていく工程、だいたい1週間くらいで豊かなミネラルが含まれる100%天然の海水塩が完成します。
今回は事前に送った濃縮海水200mlを自宅でスタンバイ。通常4%の塩分濃度は24%まで濃縮された海水を、フライパンでコトコト煮詰めていきます。
海水を木べらでかき混ぜながら、中火で炊き上げていきます。塩味は、甘味のカルシウム、酸味のカリウム、塩味のナトリウム、苦みのマグネシウムで構成されるそう。塩だけで食べても美味しい塩かはわからないと高江洲さん。ゆで卵やきゅうり、おにぎりなど各自で準備した食材に完成した塩をつけて、定番の塩ギャグ「いただきマース(塩)」の掛け声で実食しました笑。
高江洲さんは「自然のきれいな海水からできる塩は美味しい。スーパーで販売する塩の商品パッケージ裏にも塩の作り方は書いているので、興味を持ってもらえたら嬉しいです」と塩を通して海を大切にしてほしいと伝えました。
続いては船大工の技による船の模型づくり。越来造船4代目の職人越来勇喜さんがうるま市海の文化資料館から中継で教えてくれました。
沖縄では戦前まで那覇と北部の国頭村を往来した「マーラン船」と呼ばれる交易船が活躍していました。マーラン船は馬艦船、足が早く海上を馬のように走ったことからこの名がついたそうです。
古くは琉球時代に中国から伝来した卓越した造船技術から生まれたマーラン船は、那覇から生活物資や酒類、北部から木材や竹・黒糖を詰め込んだ樽などを運ぶ生活に欠かせない存在となりました。奄美の徳之島からは牛、沖永良部からは馬を運び、大きな船は子牛200頭ほど運べるサイズだったというから驚きです。時代とともに消えたマーラン船ですが、今なおその造船技術を県内で唯一、越来造船さんが伝えています。マーラン船に使用する木材は、丈夫で耐久性に優れる宮崎県日南市で取れたスギの一種・飫肥杉(おびすぎ)です。今回の船の模型づくりも本物と同じ木材を用意しました。越来さんの指導に従って、定規と竹ひごを使って線を引いていきます。
木材を切断する帯のこは工房にしかないため自宅では線引きの工程までで、後日木材を越来さんに送って切断していただくことになりますが、越来さんが、切断して実際の完成品のイメージを見せていただきました。帯のこで慎重に切断し、きれいな曲線に仕上がりました。
質問では、実際に木造船を作るのにどれくらい時間とお金がかかるの?(30メートルの船を8人で8カ月かかったそうです!)など子供たちがたくさん手を挙げてくれました。
越来さんは、10mサイズのマーラン船は12mの飫肥杉3本で造ると教えてくれました。木材資源を無駄なく使う船大工の知恵や技術は、今回作った小さな船の模型づくりにも生かされているそうです。船を通して海を好きになってもらえたらとメッセージをもらいました。
休憩をはさんで最後には、サンゴの学習です。沖縄美ら島財団総合研究センターの山本広美先生に本部町からオンラインで教えていただきました。
海の熱帯林と呼ばれ、海の生態系の重要な存在として有名なサンゴですが、実は沖縄の子どもたちでも実際に海の中で見たことがある人は多くありません。動物であるサンゴはイソギンチャクと同じ仲間で、体の中に褐虫藻という藻を住まわせ、その力を借りて固い骨をつくり成長します。サンゴが褐虫藻から得た栄養分は、食物連鎖を通じて多様な生き物を支えています。熱帯の海での豊かな生態系とは、少ない数でも多くの種類の海の生き物が生息する生物多様性のことを意味することを教えていただきました。
サンゴは強いのか、弱いのか。長生きなのか、短命なのか。ある個体の大きさは3mmのサンゴもクローンをどんどん増やして成長できるそうで、大きいものでは5mになるサンゴもいるほど大きくなり続けるサンゴは群体としては何百年も生きられるというのですから、神秘的です。
そして、サンゴが長い年月をかけて積み重なってできる地形がサンゴ礁です。世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフは衛星から見てもはっきりとその姿が見えるほど。
私たちが暮らす沖縄県もグラフの青い部分はサンゴ礁で出来ているそうで、参加する皆さんはサンゴやサンゴ礁について身近に感じている様子でした。
その貴重なサンゴが、危機に晒されているといいます。大雨で海に流れ出た赤土は、水中を濁らせ光の透過を妨げサンゴと共生する褐虫藻の光合成を妨害します。温暖化の影響により海水温が高くなると褐虫藻が逃げ出してしまい、サンゴは栄養が得られず衰弱してしまいます。これがサンゴの白化現象とされ、サンゴ礁の危機、ひいては熱帯の海の危機となっています。山本先生は、人間が海に与える影響という意味からプラスチックごみにも触れ、海の生態系への影響は、最終的にはマイクロプラスチックとなって私たちの体にも戻ってくる私たちの問題でもあることを教えてくれました。
質問では、サンゴが捕食する際に使う毒にみんなの興味が集中。どうやって毒を生み出すの?どれくらい強力な毒なの?などなど。そして、どうやったら地球温暖化を止められるんですか?という問いもありました。山本先生からは、「ごみを捨てないことやごみを拾う活動はもちろん大切。だけど、それだけで海が元気になるかは残念だけどわかりません。子どもだからできないと思いこまないで、大人を巻き込んで行動することだってできるかもしれないよ!」と、海外で小学生から巻き起こったムーブメントの事例も紹介しながら、みんなにエールを送りました。
オンラインでも集中して聞き入り、疑問や質問をたくさん問いかけてくれた熱気あるメンバー。きょうの学習をしっかりメモノートに残しておきましょうと締めくくり、1日目のプログラムを終えました。